【ライブレポ】赤い公園「SHOKA TOUE 2020″THE PARK”〜0日目〜」

 2020年8月29日、今年4月に発売したアルバムTHE PARKのツアーが出来ていなかった赤い公園が、「0日目」と称して初めての配信ライブを行なってくれた。

 個人的には執筆時点での2020年ベストアルバムはTHE PARKだと思っているから非常に楽しみにしていた。ちなみにボーカルが変わってからはまだライブに行ったことはない。先日のビバラオンラインでは見たのが最初でこれが2回目。

ライブレポ

 外の映像から始まった。歩いているような目線カメラで向かうのは、公式ページでもかつて拠点として活動していたという立川のライブハウス、BABEL The Rock Tower。入り口からステージまで歩く間にはカウンターでドリンクチケットを出してカクテルを受け取るところもやってくれた。

 地下の奥にあるステージにたどり着くと、そこには「赤い公園」の大きなロゴの入った幕がかかる。そいつが開いていよいよ開演・・・かと思いきや、映像が変わって暗くなったステージが映る。いや、別撮りかい。そっちにも幕はかかっていたが、暗いのでロゴ入りのやつかどうかはわからなかった。

 幕が開くとしっとりとしたイントロが流れてくる。一曲目は『ソナチネ』から。切ないバラードからのオープニングには自信と余裕を感じられる。まだ少し緊張しているのかちょっとだけ声が不安定だ。

 一台のカメラで動きの少ない画で歌い終えると、続けて始まるのは『Mutant』だ。一気に静から動に引き動かされる。最後の曲が止まってラスサビに入るところはバッサリ切って、『絶対的な関係』に入る。

 新生赤い公園で、旧体制の曲をやるのは初めて聞いたが、十分自分の曲にしていたし、相変わらずめっちゃかっこいい曲だ。曲の続きかのように感じるシームレスな繋ぎから『絶対零度』へ。

 この曲だけの話じゃないけど、ボーカルがいい意味で強すぎず、楽器の一部のようになっている。より楽器隊の上手さが際立つ。全員が全員、主役の顔をしているバンドだなと思った。

 少しだけ間をおいて次は『Beautiful』へ。歌に注目すれば可愛らしい曲だが、歪んだギターの音でポップさとのバランスが取れている。津野米咲がギターからピアノに切り替えて、明るくポップな『KILT OF MANTRA』に入る。

 石野が体を揺らしたり、足踏みをしたり、その場からは動かないけど可愛らしい動き。踊れる元アイドルは曲に合った仕草がお上手。

 軽快なピアノラインから始まるのは『交信』音は爽やかなのに半身で歌う石野の顔が怖かったのが印象的。影のかかり具合と無表情のせいだ。ライブ中盤のポップパートの最後は「よーほー」と石野が声をあげて「YO-HO」。こっちは体を揺らして笑顔で歌っていた。

 ここからライブは再びロックバンドの表情に戻る。かき鳴らすギターに独特なタイミングで入ってくるドラムの前奏が気持ちいい『消えない』へ。このイントロはライブの雰囲気をグッと変えるのに最適だ。そういえばオープニングで気になっていた石野の声も安定してきた。しっかり声が出てきてる。ベースも楽しげに跳ねて動いてた。

 ドラムがフロアタムを鳴らして時間を作ると、ベースが入ってきてここで『ジャンキー』そういえば最近出たこのMVなんか不思議だったな、と思い出して聞いてた。昔の外国製品のCMみたいな。

 続く『最後の花』では頑なに中央から動かなかった石野がようやく左右に歩きながら歌っていた。なんかぎこちなかったけど。あと、この曲で気がついたのは、赤い公園ってボーカル以外のメンバーは自分のコーラスパート以外であんまり曲を口ずさんだりしないんだなってこと。

 夏の終わりのような切ないアウトロから、雰囲気を残して『夜の公園』へ。前の柵に腰をかけながら歌う姿はブランコに座って好きな相手と話をしているというこの曲の世界観にぴったりだった。幅狭い柵だからお尻痛そうだけど。ベースとドラムが途中顔を見合わせて、一緒に「でね」のところを歌っていたのはキュンとする光景だった。

 給水に一呼吸置いて『chiffon girl feat.Pecori』打ち込みなので最初は後ろのメンバーはコーラスだけしていた。後半は演奏してた。男性ボーカルの入る曲なのでどうするんだろうと思っていたけど、客席からコラボの人がオタクのような服装で登場した。ずっとその赤いベンチに座っていたのかい。

 ここでようやく石野が口を開いたかと思えば「新曲やります!」と一言。どうやらMCはないらしい。新曲の感想を言うなら、"らしくない爽やかな曲"。クリーンなギターロックで、赤い公園にしてはだいぶシンプルで爽やかな楽曲。若手バンドの売り出しの一曲みたいだ。難しいことをやろうとせずに、力を抜いて出来た感じがしてとてもいい感じだった。

 そして繰り出される『凛々爛々』新生赤い公園の中では特別な曲になっているのだろう。石野が客席に飛び出して歌うと、一番終わりにメンバー紹介の時間。紹介されたそれぞれがソロパートを弾いていく。最高にかっこいい。「ボーカル私!石野理子!」と叫ぶと二番の冒頭をアカペラで歌い上げる。このアレンジは鳥肌ものだ。

 そして最後は『yumeutsutsu』最後とは言わずに始めたけど、ビバラオンラインと同じ終盤の構成だったから、なんとなく終わりな気がしていた。

 「ありがとうございましたー!」と石野が叫び。すっとブラックアウトして、あまりにも潔いライブの終幕。赤い公園です!という自己紹介も、曲ごとのありがとうも言わず、一切のMCなしでおよそ1時間で16曲を駆け抜けた圧巻のパフォーマンスだった。

 ほぼ休みなく歌いきったが、わかる限りでは一度も歌詞を間違えたり飛ばしたりせず、安定した歌唱だったし、何より目に見えて息が上がったりしていないスタミナがすごいね。

 まあもうちょっと余韻を残すような終わり方でもよかったかなとは思ったけど、これはこれで珍しい形で、男気に溢れていて、今日の雰囲気にはあっていた終わり方だったかもしれない。

 もの凄く力強い演奏に引き込まれ圧倒された1時間だった。この時期が空けたら必ずライブに行きたい。これは現場で空気を感じたい、そう強く思えた。

セットリスト

1.ソナチネ
2.Mutant
3.絶対的な関係
4.絶対零度
5.Beautiful
6.KILT OF MANTRA
7.交信
8.YO-HO
9.消えない
10.ジャンキー
11.最後の花
12.夜の公園
13.chiffon girl feat.Pecori
14.新曲
15.凛々爛々
16.yumeutsutsu

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