名前はだいぶ前から知っていた
「日本一のラッパーと世界一のDJが組んだHIPHOPユニット!」
という宣伝文句も聞いていた。
ラップもDJもヒップホップも、自分の人生には全然関係ないものだと思っていたから、興味を持つことさえなかった。どうせいかつい兄ちゃんたちがオラオラやってる怖いグループなんだろうなというイメージ。周りにも聞いてる友達はいなかった。
そんなCreepy Nutsにハマった。きっかけはまさかのラジオ。いや、Creepy Nutsとの出会いとしてはスタンダードなのかもしれない。YouTubeなんかのコメントを見ててもラジオリスナーが多すぎるから。
ちょうど家で過ごす時間が長くなった時期だったので、片っぱしからラジオを聞いていた頃で、基本的には知っているアーティストや芸人のものに挑戦していたのに、名前はフェスのタイムテーブルかなんかで知っていたからということで流してみた。そして、これがまあ面白い。
Creepy Nutsのオールナイトニッポンゼロ、もう3年もやっているらしい。3年前なんて彼らがメジャーデビューしたかどうか。今もない知名度よりもさらに知られていなかったはずで、しかもヒップホップユニットなんて、よく抜擢されたもんだ。
聞いていて、素直に関心してしまう。よくもまあ何でもない話題を広げて盛り上げていけるもんだと。特にヒップホップの話をしているわけではないから、何も知らなくても聞ける。たまに彼らの先輩ラッパーたちの名前が出てきて、その人たちにことはよくわからないけど。
長髪パーマのR-指定とシュッとした黒髪のDJ松永のコンビ。どっちがラッパーでどっちがDJかは一目でわかるのに、性格的にヤバいのは松永。先輩に生意気なことを言ったり、他のアーティストをからかったり、あれやこれやと失言をかましているのはたいてい松永の方で、それをたしなめるのがR指定だから最初は意外だった。
そんな2人がただワイワイ喋っているだけなんだけど、他の番組に比べての笑いの要素が強くて好き。電車で聞いてみたけどありゃ苦行だった。マスクしてる時期でよかった。
そんなクリーピーナッツが売れかけている。すごく今、飛躍の雰囲気がある。
これまでもラジオを始め、オファーがあればテレビにも積極的に出ていたが、いろんなメディアの中でも音楽ファンが今注目しているYouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEに登場した。
新譜が出るタイミングなのに、『生業』で出てくるところがクール。この回は普段のおしゃべりは封印し、パフォーマンス1本勝負、そして確かな技術を見せつけた。松永のDJのスキルも披露しているし、何よりRのラップが上手すぎる。
すぐ後には『かつて天才だった俺たちへ』で再びファーストテイクに出演した。これもかなりもの。純粋にRは歌がうまいね。それに関しては松永が「声色変えたりするとこも1本録りで収録するんだよね。ホント天才」と絶賛していた。
さらに2019年から1年をかけて、菅田将暉とのコラボ曲『サントラ』もついにリリースされた。ラッパー、DJ、俳優と異なる仕事のプライドを歌った曲で「みんなの人生のサントラになるような曲」という思いで作られた。
「菅田将暉とのコラボなのに再生回数が伸びねえなあ」とか「Mステ?出てえよ!」と好き放題言っていた結果、ラジオを"たまたま"聞いていたというMステスタッフのおかげでオファーが届き、念願の初出場を果たした。
たぶんそのスタッフはいつも聞いているんだなと思った。VTRでは「松永さん、念願の初出場どうですか?」なんていうプチ煽りも入れていたし、Mステには珍しい長めのトークの時間が割かれていた。まあ、あの場面は松永が台本を無視してフリートークをしたせいで、裏では怒号が飛び交っていたとのちに語られていたが。
この大舞台には百戦錬磨のR-指定の緊張していたらしく、歌詞を飛ばして次の週の各オールナイトニッポンのパーソナリティに散々いじられていたが、にしてもかっこいいパフォーマンスで反響も大きかったのか、翌々週にまたMステに出場、今度は正真正銘Creepy Nutsとしての出演だった。
こうしたメジャーなメディアでの活動も、曲作りもライブも私生活も何でもかんでもラジオを聴いていると喋ってくれるので、どんどんクリーピーナッツにはまってきた。DJの技術の優劣なんてさっぱりわからないし、Rのラップの実力も、歌うめえなくらいしかわからないのにとにかくこの二人が好きだ。
音楽番組に出ればそのスキルで初見の人にも凄みを見せつけ、トークをさせれば軽快に笑いを持っていく。変に下ネタを多用しないところも、お互いを貶しあったりしないところも良い。見た目はラッパー風ではあるが、刺青入れたゴリゴリスタイルでもないので使える。
メディアにも積極的に出て行って、CMソングもやって、いよいよCreepy Nutsが売れてくる。今は「負け顔」で笑いとっちゃう二人だが、これ以上広まって行った時、どうなっていくのか楽しみだ。もうホントにCreepy Nutsが好きすぎる、人として。